皆様いかがお過ごしでしょうか。東京・池袋の行政書士事務所エフイヴグループ、村瀬です。本日は、在留資格についての記事となります。
在留資格「経営・管理」とは、その名のとおり、日本で事業経営をしたい外国人が申請するものです。この在留資格は、前回の記事でも記載したとおり、申請して許可を得るだけでも多大な労力と時間を必要とします。
しかし、この在留資格は「取った後」も大変です。在留期間更新許可申請の際には決算書なども審査対象となりますから、しっかりと実績をつくっていかなければいけません。「〇〇の仕事じゃ食えない」などと甘えたことを言っている余裕は、残念ながら、在留資格「経営・管理」の世界においては無いのです。
この「経営・管理」において、よく出てくるキーワードがあります。それは「複数」という言葉。実際に多いのは、「在留資格「経営・管理」を取得するにあたって会社を設立したいけれど、取締役2名、同時に「経営・管理」が許可されるか?」というもの。もう1つは、「在留資格「経営・管理」は取得できたけれども、申請時に提出した会社(仮に、A社とします)以外に、B社、C社と、複数の会社を経営してもいいのだろうか?また、その場合、全会社は、資本金500万円以上ないといけないのか?」というもの。多くはこの2パターンです。
第1 複数の取締役が、同時に「経営・管理」を許可されるか?
(1)まず、許可される場合と、されない場合があります。
(2)許可されるケースとしては、端的にいえば「事業の規模が安定していて各取締役(申請人のこと)の役割分担などが明確であること」といえます。どのような事業を展開するのか、そのために、申請人がどのような役割で対応していくのか。国外取引を中心に対応するAと、国内取引を中心に対応するB、それぞれが基準を満たしている必要があることから、しっかりオフィスを構えた上で、資本金額(出資総額)も1,000万円以上を満たしていなければいけませんが、事業の継続性・安定性、申請人が「経営・管理」を取得すべき必要性などを審査されます。とはいえ、新規設立会社において、この規模をクリアできるケースは決して多くはなく、基本的には1人と考えたほうがいいでしょう(もう1人は、たとえば「技術・人文知識・国際業務」などを検討することになります)。
(3)許可されないケースとしては、端的にいえば「事業の規模が小さく、2人が「経営・管理」を取得する必要性がない場合」といえます。単に、取締役として登記しているだけで、実際上事業経営に関わらないとか、明確な事業内容・役割分担があるわけではないなどの場合は、基本的に、許可にはなれません。
第2 「経営・管理」の在留資格を持つ者が、複数の会社を経営してもいいか?
(1)在留資格「経営・管理」を許可された後、事業が展開して、2社目、3社目と広げていくシーンはあります。在留資格「経営・管理」を申請するときは、「〇〇会社の取締役になります。〇〇会社は、独立したオフィスがあり、資本金も500万円以上あり、こんな事業内容で計画しています」のように申請します。そうすると、いざ更新申請が近づいてきたときに、「2社目、3社目と勝手に設立(または取締役就任)してきたんですが、問題ありますか?」というご相談が増えます。
(2)結論からいえば、問題ありません。在留資格「経営・管理」を取得した人が、2社目、3社目と増やしたからといって、「勝手になにやっているんだ!」とはなりませんので、ご安心ください。
(3)ちなみに、審査視点ではどうでしょうか?たとえば、在留資格「経営・管理」の在留期間更新許可申請をした場合、すべての会社が審査対象になるのでしょうか?さらにいえば、2社目、3社目も、1社目の申請時と同様、すべて「独立したオフィスを構えていること」、「資本金が500万円以上あること」という、「経営・管理」の基準を満たしていないといけないのでしょうか?結論、「2社目以降」は、基準省令は無関係、と考えて頂いて問題ありません。
(4)法律上、在留資格「経営・管理」の最初の申請の際に提示した会社(事業体)のことを「活動機関」といいます。つまり、申請人が経営者としての素質があるのか否か、活動機関がどのような事業内容でどのような利益をあげることができるのかを審査していきます。入管審査官の審査対象は、あくまで「活動機関」となります。したがって、活動機関とはならない2社目、3社目、いわば「活動機関以外の複数の会社」については、活動機関として満たさなければいけないオフィスの基準や資本金の基準は、審査対象外となり、満たしていなくても問題ないという結論になるわけです。
(5)もっとも、更新申請時に、活動機関以外の他の会社のことはしっかりと伝えるべきです。特に、業績が良いということは、一方で利害関係人が増え、申請人自身も大きな責任を負うことになりますから、在留期間の付与について一定の考慮要素になりえます。
(※2022年9月15日)
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「歴史」といえば、日本史a、世界史B・・を思い浮かべるでしょうか。
お恥ずかしい話、僕は「歴史」をきちんと勉強してこなかった人間です(高校時代はロクに勉強していない学生だった上、日本史も世界史も暗記科目の一種として捉え、何とか中間・期末を乗り切る始末・・)。最近、小学生になった息子たちによく言う口癖は、「お金を全部だしてもらえて24時間自由に使える今こそ勉強し放題だよ!」と。僕が子供のころに言われたことと同じセリフを言っているわけです。
そう。「大人」になると、「社会人」になると「時間」というのはいかに貴重かを実感させられます。僕は、行政書士試験にチャレンジしたときも社会人でした。今、小学校に通う子供たちとどこが違うかというと「時間の制約」と「経費支弁者」の2点であります。つまり、大人になると、何か学びたいなと思ったときに自分で時間を捻出して、かつ、自分でお金を払って教材を買ったり講義を受けたりしなければなりません。これが小学生の息子たちとの違い。本当に「君たち。今は、本当に好きなこと、やりたいことを、自由に学べるんだよ!」という「時間」の大切さがわかるわけです(あのときやっとけばよかったかなとは思いますが、まぁ、今からやればいっかとも思いますので後悔という後悔はありませんが)。
それはともかく。僕が歴史とか語学に興味関心をもったのは、入管法の実務、つまり日頃、行政書士の仕事をつうじて様々な国の方々(外国人と表記します)の在留資格を申請する仕事をしてからです。
誤解を恐れずいうと、僕は行政書士になる前は、外国人についてあまりいい印象はありませんでした。それこそ小・中学校の頃は、岡山県倉敷市で育ちましたから、たとえば在日の方の被差別部落の話だったり(そういう地域が近くにあったため)、「人権」の話だったりが、当時の「公民」の授業ではしばしばなされていましたし、今にして思えばどこか偏った(お年寄りの先生の考えが入った?)歴史観の授業だったようにも思います。だから、まだ未成年の頃は「なんかあっちの地域の方は行ってはいけないところらしい」と浅い意識ではありますが、あったように思います。僕が本当の意味で、きちんと「人権」や「歴史」を学ぶのは、行政書士試験など法律系国家資格試験をつうじて、憲法や行政法、そこで学ぶ判例などによって、部分的ではありますが日本の歴史を読んだあたりからです。
ところが、「在留資格」の申請をつうじて出会う多くの人、たとえば、それは中国人であったり、韓国人であったり、ベトナム人、フランス人とたくさんいて、そのたびに思うことは、個々の人たちについては外国人も日本人も差を感じなかったということです(もちろん、文化・慣習に基づく差だったりはありますが、たとえば「反日」というキーワードは個人間ではでてきません)。だから、日頃本当に感じるのは、メディアがたとえば「反中」とか「反韓」と言っていても、「国」をひとくくりにしてその国の「人」たち個人を否定したり批判したりしてはいけないということです。この仕事をしていると少なからず「国」をひとくくりにして一律否定という場面に出くわします。
「在留資格」に関連する仕事をしていたからこそ、外国人と関わる機会が増えた僕も歴史に興味を持ったきっかけがあります。僕は、沖縄が好きです。学生時代や資格試験受験時代は、ほぼ毎年のようにいっていましたし大好きな県の1つです。どんなに辛い仕事、受験でも、沖縄の海やゆっくり過ぎる沖縄の街で過ごす1週間ですべて洗い流される気分でした。
まだ僕が開業するかしないかの当時(・・今も続きますが)、普天間基地移設問題がニュースで大々的に報じられました。また、米兵による少女暴行事件も沖縄県民の反基地感情をエスカレートさせました。沖縄の旅(本島も離島も含め)で訪れる土地の一部では、明らかに「中国」を感じる景色が広がっていましたし、某メディアは「中国は沖縄を狙っている、むしろ、沖縄を取り戻しにきている」とも報じたりしていました。そこから僕は、沖縄戦のことや、首里城のこと、さかのぼれば琉球処分と、あの綺麗な沖縄の景色の裏にみえる「歴史」をみていました。
そもそも沖縄県はいつ日本のものになったのか?その経緯は?沖縄県になる前の琉球王国ってどんな歴史を辿っていたのか?中国はまるで沖縄を自分の国のように言っているけれど、なぜなのか?
僕は日本・沖縄が好きだからこそきちんと歴史を学ばなければと思いました。日頃、中国の方と仕事をつうじて関わるたびに、彼らの勤勉さというか、よくも悪くも相手のことを調べ尽くす姿勢は見習わなければとも思い知らされます。沖縄のことを見るほど見るほど、琉球王国の成り立ちも、中国のことも、あるいは、アメリカのことも、もっと知りたいと感じますし、彼らのことを知るためにも、英語や中国語は学生時代にやっておくべきでしたね(笑)
(2022年9月11日)
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皆さん、こんにちは。行政書士事務所エフイヴグループ、村瀬です。今日も、当事務所のサイトにお越しいただきありがとうございます。
さて、先週僕は、数年~数十年前に予備校講師(行政書士試験対策)として活動していた頃に受講してくれていた「元受講生」の方と久しぶりに会いました。何名かお会いしましたが、今ではエンジニアとして活躍されている方だったり、今は司法書士試験を目指しながら日々仕事をしている方だったりと、変わらぬ勤勉な姿勢に学びがありました。僕も事務所の活動を含め、近況報告をしたのですが「あの頃と変わらず、勉強されているのですね」という言葉をいただきました。バリバリ勉強している彼らに比べると、ちょっと恥ずかしいレベルではあるのですが、「勉強」について、修行時代、開業時代を思い出しました。
タイトルにもあるとおり「入管法を学ぶ」ということについて、ちょっと考えたことを書きます。
僕は「行政書士」として活動していこうと決心したのは、25歳の頃です。それまでの環境や方針を180度変えるという意味では、本当に大きな決断だったと覚えています。
当時の僕は、「行政書士としての専門分野を確立しなければ生きていけない」、「僕の専門は、入管法だから入管法を学ばなければいけない」という一心でした。また、担当していた実務講座のほうの受講生の方からよく問われたことなのですが、「入管業務をするにあたって、英語とかは勉強しておいた方がいいですか?」という質問に対しても、「簡単な翻訳さえできれば、日本語だけでも大丈夫ですよ。むしろ、英語とかを1から勉強する時間があったら、入管法の勉強に、基礎から応用までしっかり時間をとった方がいい」という風に答えたりしていました。
本記事執筆現在は、あれから約13年の月日が流れました。
根本的な答えは変わらないのですが、ちょっとだけ最近考え方が変わった部分があります。それは、僕自身が「入管法を勉強したい」というより、「入管法を起点に、世界と日本のことを知りたい」という感じに変わったことです。
いわゆる「入管業務」(僕の事務所では、「外国人関連法務」などといっていますが)をしていると、本当にたくさんの国の方に出会います。パッと事件簿を眺めてみても、ベトナム、中国、台湾、香港、韓国、フィリピン、タイ、ネパール、バングラデシュ、シンガポール、アメリカ、ロシア、フランス、ウズベキスタン、アルゼンチン・・実に様々な国籍の方々の手続きを行ってきたなと思います。もちろん、多くの優秀な外国籍の方は日本語も一定話せますし、契約機関となる企業の法務部・人事部の方々は、各国の言葉に堪能だったりするので、言語に困ることはあまりありません。翻訳だって、Google翻訳などを活用すればある程度は対応できます。
でも、40代を手前に、ちょっと思ってしまったんですよね。
「入管法を勉強して、在留資格をとることが仕事!」っていう「だけ」は、ちょっと虚しいなと。
ロシア・ウクライナの問題も影響しているかもしれませんが、様々な国籍の方にお会いするたびに(上記にも各国の外務省のリンクを貼りました)、その国がどんな国なのか、どんな文化で、どんな言葉なのか、政治・経済状況はどうなのか、日本との関係性はどうなのか(もしその国が、反日とか非友好国だとすれば、歴史的にどのような問題があったからなのか・・etc)、ということを学ぶきっかけにしないと、「もったいないな」と考えるようになったのです。そもそも、自分の事務所で受任した人たちの国がどんな国か、たとえば、上に挙げた15ヶ国のうち「共和国」はどれか?、ということでさえ僕は知らないレベルだったから、余計に関心が持てるのかもしれません(笑)
在留資格が無事に取れた後、依頼者(企業の担当者や申請人)の方々と一緒にお食事する機会もあるのですが、やはり、「この人の国の言葉でコミュニケーションとれたら、もっとこの時間が楽しいし、聞きたいこと聞けるんだろうな」と感じたことは1度や2度ではありません。
これから40代を迎えるにあたって。これまでいろんな許認可の仕事を経験できましたし、入管法実務をさらに深めていきたいと思っているのはもちろんなのですが、同時に、各国の語学、歴史、政治経済について集約していくといういい目標ができました(仮に行政書士としての仕事を引退して入管法の実務から離れても、これらのことは勉強を続けると思います)。今は、「入管法を学ぶ」という点で考えるのではなく、「入管法の実務をつうじて世界を知る」という縦・横の線のように繋げていきたいと思うようになりましたし、このブログでも、可能な限り触れていきたいと思っています。
(※ 2022年9月9日現在)
>>英語検定
>>歴史能力検定
為替相場がとんでもないことになっています。1ドル144円。ついこの前まで、「さすがに139円以上は・・」なんて言っていましたが、あっという間に突破しました。アメリカやEU圏が政策金利を引き上げ続けている一方、日本は金融緩和を継続しています。いわゆる円安状態にあるのですが、これは個人的にはかなり深刻に思います。
通貨の強さでいえば、ドル>ユーロ>円、というわかりやすい構図になっています。ユーロについては、ウクライナ情勢の影響も大きく反映されることが予想されるため、ちょっとこの先に不安要素はあるものの、それでも対円で考えると、やはりユーロの方が買われてる現状。・・・いかに今の日本が「やばい」か。
とはいえ、じゃあ利上げかといっても、国債や住宅ローンなど影響が大きいところを考慮すると、日本銀行も動くに動けないのかもしれませんね。少子高齢化の日本、介護に従事する人が増える一方の日本という国に「投資の価値がない」という声もチラホラ聞こえてくるようになりました。外国為替証拠金取引をするならば、今はドル円は買い・・(とはいえこのボラは怖い。笑)なのでしょうが、それ以上に、この水準は、ちょっと怖いです、日本の将来が。
僕らの世代も不安ですが、我が子が大人になったとき、日本はどんな社会になっているのか。
(※2022年9月8日)
第1 外国人の起業と在留資格「経営・管理」
外国人が日本で事業の経営・管理業務に従事しようと思ったときは、在留資格「経営・管理」を検討することになります。僕は、よく「経営者になるための在留資格」といっていますが、つまり、在留資格「技術・人文知識・国際業務」や「企業内転勤」などが、日本の会社に雇用されて働き、その対価として給与を得るという働き方と異なり、「起業」して経営者として活動するための在留資格となります。
この在留資格、かつては「投資・経営」と呼ばれていました。すなわち、外資を日本に入れ経済発展を目指していたため、外国人起業家は、自らが日本に出資(投資)しなければいけないという前提がありました。その中心は、貿易活動やそれに関連する商業活動でした。これが、平成26年の法改正により「経営・管理」に改正して設けられました。
僕の事務所では、「経営・管理」のご相談・ご依頼はこれまで比較的多く受任してきました。仕事の繋がりで会社設立を専門とする司法書士が多かったというのもあるかもしれませんが、それ以上に、日本で事業経営をすることに対するニーズが強くなっていったと感じています。僕が開業した2011年は、まだどこか「投資・経営」というのはハードルの高いテクニカルな在留資格という印象はありましたが、「経営・管理」になってからは、誤解を恐れずいえば「やりやすくなった」といえます。
とはいえ、在留資格「経営・管理」は、依然として、就労系在留資格の中では難易度の高い分野であり、かつ、申請人本人の強い意志と計画性が必要になります。
第2 どのような流れ(スケジュール感)で進むのか?
在留資格「経営・管理」は今でこそインターネットによって情報がとりやすくなり、その全貌がわかりやすくなっていますが、それでもなかなかに難しい面があります。今回は、「外国人の方が日本で飲食店を展開するため、会社設立をする場合」の主なステップを書いてみます。
(1)事業計画書の策定
(2)オフィス物件の契約(賃貸等)
(3)会社設立登記申請(法務局)
(4)法人設立届出等(税務署)
(5)飲食店営業許可申請(保健所)
(6)在留資格認定証明書交付申請(出入国在留管理局)
※すでに在留している場合は、在留資格変更許可申請
という主に6つのステップがあり、それぞれに確認しなければいけない要件、それに関連する書類を準備します。こうかくと、「なんだそんなもんか」と思うかもしれませんが、1つ1つがすべて連動しています。
たとえば、「私は自宅マンションを所有しているから、オフィスも会社の登記も全部自宅で行う。保健所にも自分で提出する。だから、ビザ申請だけしてほしい」という方もいらっしゃいます。僕個人としては、「世の中の手続きが士業がいなくてもできる」のが理想的な社会だと思っているので、「自分でできる」がベストです。
しかしながら、「いや、このマンションは管理組合で居住用とされており、事業用途を禁止していますよ。ここでは、許認可も、在留資格もとれませんよ。」という回答をすることは、1度や2度ではなく、むしろ日常茶飯事といえます。その後は、「なにをいっているんだ、登記だってできたんだし、問題ないだろう!」という反論もあったりで(笑)、入管法、不動産登記法・商業登記法、食品衛生法など様々な法律のルールを説明することになります。
そうなんです。「簡単にみえる」、「役所だから、事情を話せばなんとかしてくれるはずだ」という淡い期待を感じることが多くあるのですが、実際は、そんな風に日本社会はできていません(法律による行政の原理という大原則があり、公務員は、法律に反するとテコでも動きません)。
(※「その2」以降に続きます。)