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2022-09-15 16:30:00

■在留資格「経営・管理」は複数の会社を経営できるか?(外国人起業 その2)

■ 「経営・管理」起業プラン(外国人起業)

 

 

 皆様いかがお過ごしでしょうか。東京・池袋の行政書士事務所エフイヴグループ、村瀬です。本日は、在留資格についての記事となります。

 

 在留資格「経営・管理」とは、その名のとおり、日本で事業経営をしたい外国人が申請するものです。この在留資格は、前回の記事でも記載したとおり、申請して許可を得るだけでも多大な労力と時間を必要とします。

 

 しかし、この在留資格は「取った後」も大変です。在留期間更新許可申請の際には決算書なども審査対象となりますから、しっかりと実績をつくっていかなければいけません。「〇〇の仕事じゃ食えない」などと甘えたことを言っている余裕は、残念ながら、在留資格「経営・管理」の世界においては無いのです。

 

 この「経営・管理」において、よく出てくるキーワードがあります。それは「複数」という言葉。実際に多いのは、「在留資格「経営・管理」を取得するにあたって会社を設立したいけれど、取締役2名、同時に「経営・管理」が許可されるか?」というもの。もう1つは、「在留資格「経営・管理」は取得できたけれども、申請時に提出した会社(仮に、A社とします)以外に、B社、C社と、複数の会社を経営してもいいのだろうか?また、その場合、全会社は、資本金500万円以上ないといけないのか?」というもの。多くはこの2パターンです。

 

第1 複数の取締役が、同時に「経営・管理」を許可されるか?

(1)まず、許可される場合と、されない場合があります。

(2)許可されるケースとしては、端的にいえば「事業の規模が安定していて各取締役(申請人のこと)の役割分担などが明確であること」といえます。どのような事業を展開するのか、そのために、申請人がどのような役割で対応していくのか。国外取引を中心に対応するAと、国内取引を中心に対応するB、それぞれが基準を満たしている必要があることから、しっかりオフィスを構えた上で、資本金額(出資総額)も1,000万円以上を満たしていなければいけませんが、事業の継続性・安定性、申請人が「経営・管理」を取得すべき必要性などを審査されます。とはいえ、新規設立会社において、この規模をクリアできるケースは決して多くはなく、基本的には1人と考えたほうがいいでしょう(もう1人は、たとえば「技術・人文知識・国際業務」などを検討することになります)。

(3)許可されないケースとしては、端的にいえば「事業の規模が小さく、2人が「経営・管理」を取得する必要性がない場合」といえます。単に、取締役として登記しているだけで、実際上事業経営に関わらないとか、明確な事業内容・役割分担があるわけではないなどの場合は、基本的に、許可にはなれません。

 

第2 「経営・管理」の在留資格を持つ者が、複数の会社を経営してもいいか?

(1)在留資格「経営・管理」を許可された後、事業が展開して、2社目、3社目と広げていくシーンはあります。在留資格「経営・管理」を申請するときは、「〇〇会社の取締役になります。〇〇会社は、独立したオフィスがあり、資本金も500万円以上あり、こんな事業内容で計画しています」のように申請します。そうすると、いざ更新申請が近づいてきたときに、「2社目、3社目と勝手に設立(または取締役就任)してきたんですが、問題ありますか?」というご相談が増えます。

(2)結論からいえば、問題ありません。在留資格「経営・管理」を取得した人が、2社目、3社目と増やしたからといって、「勝手になにやっているんだ!」とはなりませんので、ご安心ください。

(3)ちなみに、審査視点ではどうでしょうか?たとえば、在留資格「経営・管理」の在留期間更新許可申請をした場合、すべての会社が審査対象になるのでしょうか?さらにいえば、2社目、3社目も、1社目の申請時と同様、すべて「独立したオフィスを構えていること」、「資本金が500万円以上あること」という、「経営・管理」の基準を満たしていないといけないのでしょうか?結論、「2社目以降」は、基準省令は無関係、と考えて頂いて問題ありません。

(4)法律上、在留資格「経営・管理」の最初の申請の際に提示した会社(事業体)のことを「活動機関」といいます。つまり、申請人が経営者としての素質があるのか否か、活動機関がどのような事業内容でどのような利益をあげることができるのかを審査していきます。入管審査官の審査対象は、あくまで「活動機関」となります。したがって、活動機関とはならない2社目、3社目、いわば「活動機関以外の複数の会社」については、活動機関として満たさなければいけないオフィスの基準や資本金の基準は、審査対象外となり、満たしていなくても問題ないという結論になるわけです。

(5)もっとも、更新申請時に、活動機関以外の他の会社のことはしっかりと伝えるべきです。特に、業績が良いということは、一方で利害関係人が増え、申請人自身も大きな責任を負うことになりますから、在留期間の付与について一定の考慮要素になりえます。

 

 

(※2022年9月15日)

 

 

 

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2022-09-02 15:04:00

■外国人起業と在留資格「経営・管理」(その1)

第1 外国人の起業と在留資格「経営・管理」

 

 外国人が日本で事業の経営・管理業務に従事しようと思ったときは、在留資格「経営・管理」を検討することになります。僕は、よく「経営者になるための在留資格」といっていますが、つまり、在留資格「技術・人文知識・国際業務」や「企業内転勤」などが、日本の会社に雇用されて働き、その対価として給与を得るという働き方と異なり、「起業」して経営者として活動するための在留資格となります。

 この在留資格、かつては「投資・経営」と呼ばれていました。すなわち、外資を日本に入れ経済発展を目指していたため、外国人起業家は、自らが日本に出資(投資)しなければいけないという前提がありました。その中心は、貿易活動やそれに関連する商業活動でした。これが、平成26年の法改正により「経営・管理」に改正して設けられました。

 僕の事務所では、「経営・管理」のご相談・ご依頼はこれまで比較的多く受任してきました。仕事の繋がりで会社設立を専門とする司法書士が多かったというのもあるかもしれませんが、それ以上に、日本で事業経営をすることに対するニーズが強くなっていったと感じています。僕が開業した2011年は、まだどこか「投資・経営」というのはハードルの高いテクニカルな在留資格という印象はありましたが、「経営・管理」になってからは、誤解を恐れずいえば「やりやすくなった」といえます。

 とはいえ、在留資格「経営・管理」は、依然として、就労系在留資格の中では難易度の高い分野であり、かつ、申請人本人の強い意志と計画性が必要になります。

 

第2 どのような流れ(スケジュール感)で進むのか?

 

 在留資格「経営・管理」は今でこそインターネットによって情報がとりやすくなり、その全貌がわかりやすくなっていますが、それでもなかなかに難しい面があります。今回は、「外国人の方が日本で飲食店を展開するため、会社設立をする場合」の主なステップを書いてみます。

 

(1)事業計画書の策定

(2)オフィス物件の契約(賃貸等)

(3)会社設立登記申請(法務局)

(4)法人設立届出等(税務署)

(5)飲食店営業許可申請(保健所)

(6)在留資格認定証明書交付申請(出入国在留管理局)

   ※すでに在留している場合は、在留資格変更許可申請

 

という主に6つのステップがあり、それぞれに確認しなければいけない要件、それに関連する書類を準備します。こうかくと、「なんだそんなもんか」と思うかもしれませんが、1つ1つがすべて連動しています。

 たとえば、「私は自宅マンションを所有しているから、オフィスも会社の登記も全部自宅で行う。保健所にも自分で提出する。だから、ビザ申請だけしてほしい」という方もいらっしゃいます。僕個人としては、「世の中の手続きが士業がいなくてもできる」のが理想的な社会だと思っているので、「自分でできる」がベストです。

 しかしながら、「いや、このマンションは管理組合で居住用とされており、事業用途を禁止していますよ。ここでは、許認可も、在留資格もとれませんよ。」という回答をすることは、1度や2度ではなく、むしろ日常茶飯事といえます。その後は、「なにをいっているんだ、登記だってできたんだし、問題ないだろう!」という反論もあったりで(笑)、入管法、不動産登記法・商業登記法、食品衛生法など様々な法律のルールを説明することになります。

 そうなんです。「簡単にみえる」、「役所だから、事情を話せばなんとかしてくれるはずだ」という淡い期待を感じることが多くあるのですが、実際は、そんな風に日本社会はできていません(法律による行政の原理という大原則があり、公務員は、法律に反するとテコでも動きません)。

 

 

(※「その2」以降に続きます。) 

 

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