第1 外国人の起業と在留資格「経営・管理」
外国人が日本で事業の経営・管理業務に従事しようと思ったときは、在留資格「経営・管理」を検討することになります。僕は、よく「経営者になるための在留資格」といっていますが、つまり、在留資格「技術・人文知識・国際業務」や「企業内転勤」などが、日本の会社に雇用されて働き、その対価として給与を得るという働き方と異なり、「起業」して経営者として活動するための在留資格となります。
この在留資格、かつては「投資・経営」と呼ばれていました。すなわち、外資を日本に入れ経済発展を目指していたため、外国人起業家は、自らが日本に出資(投資)しなければいけないという前提がありました。その中心は、貿易活動やそれに関連する商業活動でした。これが、平成26年の法改正により「経営・管理」に改正して設けられました。
僕の事務所では、「経営・管理」のご相談・ご依頼はこれまで比較的多く受任してきました。仕事の繋がりで会社設立を専門とする司法書士が多かったというのもあるかもしれませんが、それ以上に、日本で事業経営をすることに対するニーズが強くなっていったと感じています。僕が開業した2011年は、まだどこか「投資・経営」というのはハードルの高いテクニカルな在留資格という印象はありましたが、「経営・管理」になってからは、誤解を恐れずいえば「やりやすくなった」といえます。
とはいえ、在留資格「経営・管理」は、依然として、就労系在留資格の中では難易度の高い分野であり、かつ、申請人本人の強い意志と計画性が必要になります。
第2 どのような流れ(スケジュール感)で進むのか?
在留資格「経営・管理」は今でこそインターネットによって情報がとりやすくなり、その全貌がわかりやすくなっていますが、それでもなかなかに難しい面があります。今回は、「外国人の方が日本で飲食店を展開するため、会社設立をする場合」の主なステップを書いてみます。
(1)事業計画書の策定
(2)オフィス物件の契約(賃貸等)
(3)会社設立登記申請(法務局)
(4)法人設立届出等(税務署)
(5)飲食店営業許可申請(保健所)
(6)在留資格認定証明書交付申請(出入国在留管理局)
※すでに在留している場合は、在留資格変更許可申請
という主に6つのステップがあり、それぞれに確認しなければいけない要件、それに関連する書類を準備します。こうかくと、「なんだそんなもんか」と思うかもしれませんが、1つ1つがすべて連動しています。
たとえば、「私は自宅マンションを所有しているから、オフィスも会社の登記も全部自宅で行う。保健所にも自分で提出する。だから、ビザ申請だけしてほしい」という方もいらっしゃいます。僕個人としては、「世の中の手続きが士業がいなくてもできる」のが理想的な社会だと思っているので、「自分でできる」がベストです。
しかしながら、「いや、このマンションは管理組合で居住用とされており、事業用途を禁止していますよ。ここでは、許認可も、在留資格もとれませんよ。」という回答をすることは、1度や2度ではなく、むしろ日常茶飯事といえます。その後は、「なにをいっているんだ、登記だってできたんだし、問題ないだろう!」という反論もあったりで(笑)、入管法、不動産登記法・商業登記法、食品衛生法など様々な法律のルールを説明することになります。
そうなんです。「簡単にみえる」、「役所だから、事情を話せばなんとかしてくれるはずだ」という淡い期待を感じることが多くあるのですが、実際は、そんな風に日本社会はできていません(法律による行政の原理という大原則があり、公務員は、法律に反するとテコでも動きません)。
(※「その2」以降に続きます。)